悠冴紀2017年12月15日詩『氷の道標』蒼白い雪を被った鋭い針葉樹林を 私は手探りで駆けていく どこから来たのか どこに向かっていたのか 時折わからなくなる自分がいる 今はそれでも 走るほかない 凍てついた樹海の奥から 狼の遠吠えが聞こえてくる あれは血に飢えた冬の捕食者 かつての私に 似た奴らだ 目印もない
悠冴紀2016年10月1日詩『ZERO』雪が降り積もる 枝から舞い落ちた枯れ葉の上に すべてを無に返す白い雪が この終わりは 旅の始まり 束の間の平穏に中断された 忘れかけていた歩みの再開 遠くへ行くよ 本来の私に相応しい彼方 どこでもない枠組みの外側へ 築き上げたものを自ら打ち壊し あるべき道のため...
悠冴紀2016年9月23日詩『曼珠沙華』作:悠冴紀 赤い大地 血のような 炎のような 曼珠沙華が咲き誇る 鮮やかな赤 毒々しくも繊細で 雨ざらしの野に 凛と伸びる 曼珠沙華が萌える 混沌の記憶の中に 血のような 炎のような 一面の赤 ―― 無彩色の季節を越え 今 再び 懐かしいような 初対面のような...
悠冴紀2015年11月26日詩『モノ~無機質のユートピア』人は何にでも慣れるという 苦痛にも 恐怖にも 悲しみにも 少しでも楽になろうと望むあまり 己の感情を麻痺させる 確かに人は慣れていく 富にも 貧困にも 死臭にさえも 馴染んではならぬものもあるとは考えもせず 強さと信じて 慣れていく 人は自分で思うほど器用ではない これほど