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執筆者の写真悠冴紀

詩『γρύψ(グリュプス)』

更新日:2023年2月24日


グリュプス(グリフォン、グリフィン、グライフ)

ありがとう さようなら 今おもむろにこの大地を離れ いつかのように羽ばたいていくから どうか皆 私を手放して あの懐かしいアッシュブルーの空 何者をも囲わない私なりの故郷へ 記憶とともに 解き放って―― 誰かを受け入れる腕ばかりが成長し いつの間にか

翼が退化してしまっていた 私が私自身であることが価値を成す 唯一無二の創造の翼が…… 理解できなくていい ただこの選択を

どうか許して 多くを受容する腕が翼を妨げるのなら 私はどちらかを選ぶほかない 誰も何も 惜しまないで 誰も何も 嘆かないで 私よりも優れた腕の持ち主 私よりも上手く皆を受け止められる相手は 他にいくらでもいるだろう この翼、この羽ばたきは 私の代わりを見出せない 薄情だと責めてもいい 身勝手だと呆れてもいい ただ誰も決して

引き止めないで この手の内にある数多の物語のため 私は改めてまた

帰属先なき単独者へと―― 遠くでずっと 見守るから どうか静かに 見送って 何も心配しなくていい 元より私は

この道から来た身 大事な人なら

すでにいる 支えになる関係も 孤独でもなければ

不幸でもない

寒くもなければ

寂しくもない 気温の低い上空でも 体温の保ち方は心得ている 少しも迷いのない自分を見て 時々ひどい人間のような気はするよ それでも私は

留まれない 長く伸びすぎた腕を脇にしまい 翼を再び 大きく開く どうか私を呼ばないで 静かに今 立ち去らせて この地上で私にできることは もう充分にやってきたと思う だからそろそろ 空へ帰るよ 自ら生み出す物語のために この世で唯一の私の居場所 アッシュブルーの空の彼方へ ――

※2014年3月の作品 春ですねー!

そして春と言えば、学生たちにとっては卒業・入学シーズンですよね。慣れ親しんだ場を離れ、身近な知人友人との別れがあったり、独り立ちをして新たな場へ移っていったり……と、何かと大きな動きが見られるシーズン。そんな季節柄を踏まえ、自分自身が経験した過去の色んな転機や別れを振り返りつつ、今まさに直面している眼前の変化をシンクロさせて書いたのが、この「グリュプス」という詩作品です。 (※この作品における別れや旅立ちは、明らかに卒業や定年など自動的に訪れるものとは違う、自ら選択した積極的な別離を表現していますが・・・A^_^;)) 💡ちなみにグリュプスというのは、古代ギリシャの伝説上の幻想生物で、ライオンの身体に鷲の頭と翼を持つ怪物のことです。ゼウスやアポロンやネメシスなど神々の車をひく役目を担い、黄金を守る守護獣としても知られています。英語圏だと、たまにグリフィンとかいう名前の人がいますが、まさにその語源ですね。 注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「詩『グリュプス』(悠冴紀作)より』と明記してください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります!


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