傷を秘めてきた君に 贈りたいものがある 心の一端を見せてくれたお礼に オーロラを贈ろう そう、夜の終わりを告げる あの謎めいた曙の光だ 虹ほど馴染みやすくはないけれど 恐れる必要は少しもない あれは空の贈り物 そして夜を耐えた者の中に 色彩豊かに宿るもの 冬が過ぎても
見ることはできる 君が自身の力を信じ 心の空を照らし出せば 私は彩り方を教えよう 言葉ではなく 在り方で それが私にできる唯一の贈り物 ずいぶんひどいものを見てきたんだね 君の身にそんなことがあったとは けれど もう大丈夫 君の見た暗闇は
後ろに置いてきたもの 過去はここまで追いつけない 私の隣にいるといい ここは四季を味方につけ オーロラを絶やさぬ特異な場所 夜でも朝でもない貴重な景色が 望めばいつでも見られるんだ 胸を張って 声を大きく保ち 突き飛ばすように笑うといい 君を煩わすものが皆逃げていく これが私の見出したすべ 経験上最良のやり方なんだ 君が今は笑っていて良かった もう大丈夫だと
見ていればわかる 歳を重ねるのも悪くはない これからは 色んな場所に旅しに行こう まだ見ぬものを見て 互いの知らないものを伝え合い 心の向くまま どこへでも 君はもう大丈夫 オーロラのカーテンは朝の幕開け 同じ夜は二度と来ない
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※2014年5月の作品 この作品は、副業で知り合った友人の一人から、ブラック企業に関わり合ってしまった壮絶体験を聞いたことで閃いた詩です。単に労働時間が長いとか、安給料で馬車馬のように働かされるというだけでなく、会社の実態を他言すれば殺すとか、住まいや家族の情報はすべて握っているぞと脅しをかけたり、社内に盗聴器を仕込み、社員同士で監視し合わせ、言動を逐一密告させたりするほど異常な職場環境だったようです。 人の世では、そこここに罠や落とし穴があるもの。2012年に出版した私の作品「PHASE(フェーズ)」の前半でもチラと書いていますが、自分は真っ当な表社会に暮らしてきた普通の人間なのだから、自分に限ってそんなひどい目には絶対にあわない、そんな怪しげな連中と関わり合うことなど有り得ない、なんていう安全神話は幻想なのです。表社会も裏社会も、物理的には同じ世界に属するもの。不可視で不明瞭な境界線のためにそれと気付いていないだけで、遠い世界の他人事と思っていた「あちら側」の問題は、実はすでに目の前にあって、知らず知らず接触しているものなのです。 一寸先は闇。そんな危うい現実を、早い時期に身を持って体験したことを、勇気を出して打ち明けてくれた友人のために、私はこの詩を作りました。
恐怖体験のトラウマにめげず、陰気な世捨て人になったり第2の加害者になったりしなかったYさん! 人間としての品性を落とさずに今まで生きてきたあなたは、充分に立派です! 奪われた月日はこれから取り戻し、困難を脱した今だからこそありがたみを実感できる平穏な毎日を、取り取りに彩り共に謳歌しましょう!(^_-)-☆ ……え?
そんな個人的なメッセージをこんなところで書くなって?? 失礼いたしました~m(_ _)m それはそうと、作中後半の「歳を重ねるのも悪くはない」という部分に、ちょっくら追加解説です。 30を超える歳になって知り合い、まだ付き合いの浅い私には、以前のYさんがどんなだったか、よくは知らないのですが、今は本当に生き生きとして、時間という時間を余すところなく楽しんでいるように見えます。それもこれも、若いうちに悲惨な経験をして、自分なりに底を見てきたからではないでしょうか。そういう意味では、過去の黒い体験も無意味ではないし、経験を積んで歳を重ねるのも悪くはないな、という気がするのです。 確かに、身体面では、若さを失い衰えていくことは万人の悩みであって、老けていいことなんて一つもないと思いますがA^_^;、精神面では、年々経験を昇華する知恵や、困難に対処する要領が身について、気持ちの上で色んなことから解き放たれていく感じがします。いい意味で落ち着きを得て、楽なんですよね。逆に今よりずっと多感で経験値の低い若い自分のままだったら、何か想定外の困難に直面したとき、今のように冷静に判断したりサラッと流して割り切る、なんてことはできなかっただろうな……と。 人災や罠の類いは他にもいっぱい溢れているし、困難な局面は一生を通してこれからも何度となくあるでしょうけど、よほどのことがない限り、今ならもう大丈夫。そんな気がしています。そしてそう思えること、この余裕と気楽さ自体が、代価として失われた若さに見合う最大の収穫なのではないでしょうか。まさに、重苦しい闇夜を抜けた先に初めて見出せる、彩り豊かな曙の光。心のオーロラです✨ 注)この詩作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「詩『オーロラの宿る場所』悠冴紀作 より」と明記してください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります!
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