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執筆者の写真悠冴紀

詩『傍観者』

更新日:2023年2月24日




作:悠冴紀

木々がざわめき 雲が不安定に闇夜を漂う


試されているのは 君か? 私か?


この闘いに 敵はいない 明確な目標になるような 人間の敵は


実体のない幽霊を相手にしているかのよう


ある日突然襲い掛かり 姿も見せずに蝕んでいく


数えて何度目の試練だろう これまでで一番危うい気がする 明日を脅かす類いのやつだ


いつかのように 知恵を絞って策を講じることも 技を磨いて力を身に付けることも 意味をなさない この状況では


纏いつくような この疲労感は何だろうか 為すすべなく見守る以外に道のない 絶え間ない緊張と 無力感


あるのはただ 生か死か


側にいるだけで助けになるなど 当事者寄りの気休めにすぎない


身近でありながら傍観者でいることの 筆舌に尽くしがたい もどかしさ


何もできない 君も 私も


互いに一番苦手な状況だ そのときが来るのをただ待って あとは人任せに委ねるほかないとは


この疲労感は何だろうか……

不安定に揺らめく黒ずんだ雲 遠くに鳴り響くサイレンの音


空がざわめく 胸がざわつく


何を試すためのカウントダウンか

今はとにかく 何もできない


***********

※ 2020年1月の作品。


注)シェア・拡散は歓迎します。ただし、この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「詩『傍観者』(悠冴紀作)より」といった具合に明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように配信・公開するのは、著作権の侵害に当たります。

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