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悠冴紀

詩『PHOENIX』

更新日:2023年2月24日


詩『不死鳥』挿絵

君は不死鳥になった 私の中で 永遠に消えない 君がお別れを言いに来たとき あの場に私がいなかったのは このためかもしれないと今は思う 君の命に翼が生えて 空高く飛び立つのを見た気がする 君を愛した者たちの涙をあわせ 空が水の翼を編み上げた 君は不死鳥 濁りを知らない柔らかな翼で 今もどこかを舞っている 君はそうなるに相応しい存在だった 私のような人間さえ 許し 受け入れ 愛し方を学ばせた 約束するよ 君を捜して 毎日空を見上げると 雲よりも遥かに高い 開けたところを 毎日必ず見上げよう ── 君が地上に蒔いた種が 私たちの大地で芽吹きだした 翼はここにもある 君の遺した 何よりもの贈り物 私はそこに言葉を注ぎ 君の切れ端を解き放つ 君は不死鳥 二度とは降り立つことのない空の住人 君がくれた尊いものに 私が綿帽子をつけ

舞い上がらせる 届かぬ君を想いながら 記憶の大地から

君に贈る 君は死なない 君に何かを学んだ者たちが 君のパーツを育てていく 君を空に重ね見る限り 二度と決して失われない 私を忘れてもいい 私は君を忘れない 二度と君を死なせない 君は不死鳥 皆の涙を翼に変えて 空の彼方で永遠になった

※2012年10月作 タイトルの『PHOENIX(フェニックス)』というのは、エジプト神話に登場してくる霊鳥のこと。焼死しても灰の中から蘇る不死鳥とされている。


この詩は、一見誰か親しかった故人を思って書いた作品のようですが、なんと実は、かつて飼っていた愛犬を思い浮かべて書いた作品です A^_^; 実家時代、うちでは複数種の犬を飼っていましたが、この詩の『君』は、私が小学生時代に飼っていたトットという名前のコリー犬♀です。(←『窓際のトットちゃん』から命名:笑) 種を明かせば犬ネタだった、ということで、何やら笑われてしまいそうですが 、作品自体は、喪失感に満ち溢れた大真面目な一作ですし、読み手それぞれの死別体験に置き換えて、必ずしもペットだけではない人間同士の別れなども重ね見ながら読めば、実に切ない作品です。 なのであえて、「これは犬の話だ」とわかるような表現は、作中から省いてしまっています。愛する者の死は、相手が何者であれ、残された側にとっては等しく辛く、悲しく、重いもの。そしてできることなら、その生の余韻を永続させたいもの。そんな思いを共有してもらいたくて、なるべく普遍的な表現で描写したのです。 ちなみに、詩中3~4行目の「君がお別れを言いに来たとき、あの場に私がいなかった」という部分には、ちょっとしたエピソードがあります。愛犬トットは、死の3~4日ほど前から、夜中に家族の元を順繰り訪れて、いつの間にか部屋に上がり込み傍で一緒に眠っていました。行儀のいい犬だったので、いつもなら決して自分から勝手に上がり込んだりはしなかったというのに。 残念ながら、そのとき私は、神戸の祖母の家に泊まり込んでいたので、留守でした。にも拘わらず、トットは私の部屋にもやってきて、一晩私の勉強机の下で眠っていたと、あとで姉から聞き知りました。 つまり私だけが、トットに最後のお別れをしてやれなかったわけです。弱った身体を鞭打って、せっかく私の部屋にも挨拶周り(?)に来てくれていたというのに。 トットとの死別は小学生の頃のことですが、私が年月を経て尚、詩作品に登場させるほど生々しく振り返るのは、ひょっとするとその別れ方が未だに心残りだったからかもしれません。皮肉な話ですが、さようならを言い損ねたことそれ自体が、私の中のトットを永遠にした。そんな気がします。

▲ 私のイチオシMusician、ケイシー・ストラットンの一曲。

タイトルが同じなので、記事に埋め込んでおきました (^_^;)

こちらもとても切なく、美しい一作です。BGMにどうぞ(笑)

注)この詩作品を一部でも引用・転載する場合は、

 必ず「詩『不死鳥』(悠冴紀作)より」と明記してください。

自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります !

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